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❅·̩͙29 ページ29

聞き覚えは無い。
振り向いたら不味いと直感が告げていた。



そもそも私はそんな名では無い。
だから、無視をした。
ものすごい力で肩が掴まれる。



「…いったいな。女の扱い知らないの?誰お前」



下卑た笑み。
タバコの匂いがまとわりついた、全体的に汚い印象を受ける。
女に触れるならせめて身なりには気を使って欲しいものだ。



「 白雪なんてダセェとこやめてこっち来たら?もてなすよ〜?」


「何言うてんねんおっさん。冗談は顔だけにしてや」



食い込みそうなほどに掴まれていた肩から力が抜けた。
隣にできた影。聞き覚えのある声と、関西弁。



「向井、」



オレンジの雪が揺れている。
周囲に沢山いる観衆からは、戸惑いのどよめきが起きた。



飛び交う声を背に、予想だにしないニコッと明るい笑顔を浮かべた彼が目の前の野獣を嗤う。
そして、頭突きをかました。



向「行きますよ先輩」



野獣がよろめいた。
その隙に腕が取られ、走って階段を駆け上がる。
リーチが全然違うのに足がもつれないのは、
きっと彼が気を使ってくれてるから。



さすがに校内まで入ってきたら教師も責任は免れないので
どうにか食い止めてくれることを願う。
警察を呼ぶなり自ら追い払うなり、
もしくはふっかが頭を潰すなり。



入ったのは誰もいない空き教室。
机や椅子が乱雑に積み上がり、時の流れに置いていかれた黒板が寂しく教室を見渡している。



その中にひとつだけ、机と椅子がセットで片隅に置かれていた。



私の腕を離した向井が机にもたれかかる。



向「俺保健室登校やったんすよ」



どこを見るでもなく、俯いたままぽつりと零した。



向「中学ん時女の子から度の過ぎたイジりをされてて、
高校入っても女の子苦手なままやし教室も入れんくて」



昨日は語られなかった向井のこと。
本人から聞くのは胸が痛いが、
話してもいいと思ってくれた証拠だ。
何も言わずに向井を見ていた。



向「保健室で1人で課題やってた時、めめが入ってきたんすよね」



暴れん坊将軍だった目黒のことは
教室に入らない彼の耳にも届いていた。
初めて見た実物は予想以上に傷だらけ。



欠けたものを必死に埋めようとしている。
それは、いつしかの自分と同じで。
もう埋めることを諦めた自分には眩しくも思えたと。

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hrr - おもしろくて一気読みしました!続き楽しみにしています! (4月10日 14時) (レス) id: 5934ce0412 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:カジャ | 作成日時:2024年3月20日 19時

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