Aぇの紅一点神出鬼没のお姫さま (ページ31)

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大好きな先輩 - abe ページ31

( 阿部亮平 side )

クイズ番組の収録が終わってテレビ局の中を歩いていたら、見知った顔が前から歩いてきた。
黒の髪が揺れてすっとした視線が俺を捉える。

『阿部くん！』

通る声に名前を呼ばれて片手をあげた。

阿部「しろ久しぶり」

『お久しぶりです！』

嬉しそうに寄ってきてくれる姿は幼かった頃と変わらず可愛らしい。
彼女が東京にいた頃、
勉強が嫌いじゃないというしろとは気があって話す機会が多かった。
そのあととある理由から彼女は懐いてくれているのだと思う。
手を伸ばして犬の耳でも見えそうな彼女の頭を撫でた。

阿部「これから収録？」

『です。阿部くんも？』

阿部「いや、俺は今終わったところ」

『残念。終わるタイミング同じだったらご飯でもと思ったんですけど』

本当に残念そうにするものだから笑ってしまう。
彼女はこういうところが
愛される人なんだろうな、と思って
アイドルとして見習わないとなんて思った。

阿部「今日ここで終わりなの？」

『そうなんです。終わったら大阪帰ろうと思ってました』

阿部「じゃあどっちにしてもだめでしょ(笑)」

『阿部くんとご飯行けるなら帰るの明日の朝にします』

阿部「なら待ってようか？」

『え、それは悪いです。今日の番組収録長めのやつだし』

阿部「今度のクイズの勉強したかったし、
カフェとかで時間つぶしてるよ」

『……いいんですか？』

阿部「しろがメンバーに怒られなければ」

『正門に報告するので大丈夫です』

阿部「報告はするんだ(笑)」

前に誰かと２人で出かける時は
メンバーに事前共有している話を聞いていた。
過保護だなあと笑ってしまう反面、
過保護になってしまう気持ちもわかる。

阿部「なら終わったら連絡して」

『やった！のえくんに阿部くんとご飯って自慢します』

阿部「(笑)」

しろはのえると遠い親戚、らしい。
これが彼女が俺に懐いている理由。

連絡しますね！
と笑顔を見せて収録に向かう彼女を見送った。