君の記憶の中に僕はいない【ab】 (ページ2)

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病室に行くとチューブに繋がれているA。
頭には包帯が巻かれていて可愛い顔で寝ている。

先程警察から電話があり、Aを撥ねた車は信号無視とプラスして飲酒運転で過失運転致傷罪で逮捕。
Aをこんなのにさせたのだからそれ以上の罰を受けるべきだと思う。

突然告げられた恋人の記憶喪失。
彼女には両親がいなくて、親族もなし。
だから、最も近い関係者の俺に一番最初に電話がかかってきたのだ。

『なんで無理したんだよ…』

そんな問いかけはシーンと静まり返った病室に響く。

記憶がなくなってしまったこと、
Aを守れなかったこと、
Aにこんな障害を抱えさせてしまったこと、
色々な後悔が押し寄せてきてAの手を握りながらひたすら泣いた。

マネージャーに事情を伝えて、メンバーにも事情を伝えた。

亮平ごめん。話したいことがある。

亮平○○病院の○○○号室に来て欲しい。
マネージャーも連れてきて欲しい。
病院には伝えておくから。お願いします。

すごく文章として固くなってしまった。
数十分も待てばぞろぞろと人が揃ってきて、
俺の腫れている目を見て驚いた。

「…失礼しまーす…って、どうした阿部。」

「失礼します…どうしたの阿部ちゃん」

最初に来たのは照とめめ。
どうしたって言う声が1オクターブくらい低くて少し怖い。
みんなが来たら話すね。と言ってAの頭を撫でた。
メンバーとAは少しだけ面識がある。

俺の顔を見たあとAの顔を見て2人は固まった。

「え、Aさんだよね、？」

『…うん』

それ以上は何も聞かなかった。
段々とメンバーが揃ってみんなふたりと同じ反応をする。

「……え、Aちゃん、？？
なんでこんなことになってるの…？」

『…撥ねられた。』

「撥ねられたって…Aさんの不注意とかじゃないんだよね、？」

『…飲酒運転、信号無視』

淡々と話すしか無くなった。
そうしないと平然を保てないと思ったから。

「阿部ちゃん…話して欲しい。
なんでこうなったかはわかったけど俺らを呼んだってことはなんか相当なことがあったんだよね。
少しずつでも俺ら話聞くから。」

俺の横に座って手を握る佐久間。
いつもおちゃらけているけど人一倍周りをみていて
相手が欲しい言葉を言ってくれる。

おそらくそれが佐久間のいい所だろう。