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ＮＯside
『終わった！急ぐぞ北斗！』
松村「ちょっと待てって！遺体処理するから」
その後の任務はいつになくやる気に満ちたAがものの数分で蹴りをつけた。
みんなで食事に行くことが久々だからか、はたまた酸辣湯麺に対する熱が熱いだけかは分からないが。
北斗が手袋を填めて遺体を端に寄せた。
いつも通り、ビニールシートを被せる。
ただ、何かがおかしい。
Aの持つ武器は確かに流血を要する。
だが、大きい動きをしない限り、血痕はそう飛ばない。
そのはずなのに、血が考えられない範囲まで散っていた。
北斗の視線をおって、Aもその不自然な血痕に気づく。
『……そんなとこまで、飛ばないよね』
松村「……うん、不自然だ。今までここで事件があった記録もないのに」
渡された任務用のバインダーとにらめっこしながら北斗は答えた。
念の為Aは武器を持ち直す。
『……！待って、北斗。気配ある』
松村「……？どこから？」
『あのものか……げ……』
Aは自分の目を疑った。
目の前にいるのは、足を押さえた北斗。
顔を痛みに歪ませている。
『は、北斗、なんで、どうしたの、』
松村「来るな！！逃げろ！！」
真剣な北斗の声。焦りも混じっていた。
痩せ我慢もいいとこだろう。
でも、今の北斗にそんなことはどうでも良かった。
Aには死角で、自分にだけ見える疑いようのない現実。
これを見たら、Aはどうなってしまうのか。
考えるだけで、北斗は怖かった。
けれど、同時に知っていた。
Aが、そんな制止を聞く人ではないということを。
充分に警戒していた。
現実を受け止める勇気を持って覗いた。
絶対に驚かない自信があった。
一瞬で終わらせるつもりだった。
動揺を抱かないはずだった。
そんな覚悟、意味がなかった。
正解はもっと残酷で、Aを深く傷つける。
北斗に駆け寄って見た、Aの瞳に映った1人の人物。
始めは、声も出なかった。
当たり前なんかないと、改めて実感させられる。
『_____兄さん』
風磨「やっぱり、バレちゃうか。
流石は天才ルーキーバディって言われるだけあるわ」
Aの表情は絶望に染った。
北斗は風磨を睨みつけ、苦しそうにしている。
ただ1人。
たった1人、この人だけが。
Aの実の兄である、この人だけが。
菊池風磨だけが、楽しそうに、屈託のない笑みで微笑んだ。
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作者名：あられくん | 作成日時：2023年11月13日 16時
